色づく世界の明日から ゆいとは死亡した? – ゆいとの60年は!?
結論から言うと——おそらく ゆいとは他界している可能性が高い でしょう。
作中で直接その名前が示されることはないのですが、60年後の世界で、瞳美がとある墓の前で静かに涙を流すシーンがあります。物語の流れを考えると、それがゆいとの墓だと受け取った視聴者も多いはず。
とはいえ、墓石の名前は映されません。
「瞳美の母では?」「別の部員では?」といった意見もあり、結局のところ真実は語られないまま。でも、その“余白”こそがこの作品らしさなんですよね。
誰の墓であるかよりも、瞳美が過去を経験したうえで、今の人生をどう受け止めているのか——そこに重きが置かれている気がします。名前を出さずに視聴者の想像に委ねたからこそ、瞳美の涙の意味がより深く、胸に迫ってくるんです。
ゆいととの出会い
タイムリープした瞳美が最初に降り立ったのは、街でも公園でもなく、よりにもよってゆいとの家の…しかも彼の部屋の中。瞳美は窓から家を出たことによって不審者として周囲に誤解されるという、なんとも言えない最悪の出会いでした。それでも、ある日瞳美はゆいとのスケッチブックを見ます。
そして、驚くべきことに——
色を失った瞳美の視界に、ゆいとの絵だけは色が戻って見えた のです。
瞳美の心情の変化
最初は絵の色に惹かれていた瞳美でしたが、次第に絵を描く本人であるゆいとに心を向けていく。その過程がとても自然で、丁寧で、見ているこちらまで胸が温かくなるようでした。
一緒に部活動をし、学校で時間を重ねていく中で、瞳美は初めてときめきや、心が色づく感覚に触れていきます。ゆいとの存在は、彼女にとって“色を取り戻すきっかけ”そのものであり、ただの恋愛相手以上の意味があったと感じます。
色づく世界の明日から ゆいとは死亡した? – ゆいと以外の、みんなのその後は・・・?
実は、魔法写真美術部のみんなの60年後については、琥珀(おばあちゃん)以外、まったく描かれていません。
先ほど触れたお墓のシーンも含めて、誰がどんな人生を歩んだのかは語られず、視聴者それぞれの想像に委ねられています。
これ、よく考えると本当にすごい演出なんですよね。
もし他のメンバーの未来がハッキリ描かれてしまったら、一番気になる“ゆいと”の行く末だけ伏せられるのは、どうしてもバランスが悪くなる。だからこそ、あえて全員を見せないことで、ゆいとの未来にもそっとカーテンをかけたままにしているんだと思います。
それにしても、60年後のみんなの姿を完全に伏せるというのは、書き手として相当の覚悟が必要です。
私だったら……たぶんどこかでチラッと描きたくなってしまいます(笑)。でも原作のヤシオ・ナツカさんは、そこをぐっとこらえて、瞳美の「変化」と「前へ進む気持ち」だけにフォーカスした。
結果として、作品全体がとても美しい余韻で包まれ、明るい未来へ向かうハッピーエンドとして締めくくられているんですよね。
瞳美が色を取り戻し、未来を歩き出す。その一歩に、説明はいらない——。
そんな作り手の想いが伝わってくるようで、私はこのラストに何度も心を揺さぶられました。
色づく世界の明日から ゆいとは死亡した?- 瞳美が未来へ帰ってから、”60年前”の「その後」
タイムカプセル
瞳美が未来へ戻るとき、タイムリープでは 一切の手荷物を持っていけない──。
その決まりを知った魔法写真美術部のみんなが選んだのは、未来の瞳美へ向けたアルバムを作ることでした。
短い時間だったのに、瞳美はすっかりみんなの“特別な存在”になっていました。
もちろん瞳美にとっても、彼らは色を取り戻すきっかけとなった大切な仲間たち。だから、このアルバムは「思い出のまとめ」ではなく、『未来の瞳美へ託す“色の記憶”』だったんですよね。
そしてラストで琥珀(おばあちゃん)が語る真実。
彼女は60年前の仲間たちを心から信頼していたからこそ、「瞳美はきっと彼らと出会えば変われる」と信じて、過去へ送り出したと明かします。
若い頃に出会った“宝物のような人たち”を、孫にも分けてあげたかった──
そんなおばあちゃんの優しさがあふれた言葉に、思わず涙してしまいました。本当に温かくて、胸がじんわり熱くなるシーンです。
絵本『なないろのペンギン』
さく・え あおい ゆいと
瞳美が小さい頃から読んでいた、唯一“色が見えた”絵本。
私にとっても、この作品の中で最も心を揺さぶられた場面でした。
瞳美はずっと、「お母さんと何度も読んだから色が見えたんだ」と思い込んでいました。しかし、未来で気づきます。
それだけが理由じゃなかった と。
この絵本は——
60年前に過ごした魔法写真美術部との思い出を、ゆいとが“色”として描き残した物語だったのです。
ゆいとが本当は伝えたかった瞳美への想い。
言葉では届かなかったその気持ちが、60年という時間を越えて、絵本という形でようやく瞳美に届く。
虹にたとえられた日々。
そしてラストの一行——
「私の色は何色かしら?」
あの瞬間の切なさと温かさがいっぺんに押し寄せて、涙なしでは絶対に見られません。
作品全体を締めくくる、まさに“奇跡のシーン”でした。


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